夜のブランコ

ある公園の近くを夜に通ったら、ときどき誰かが思いっきりブランコをこいでいる。ギーコ、ギーコ、と激しく揺れる影が見える。しかも一人でこいでいる。そんなに大きな公園でもないし、人通りも少ない場所だから、そのときも、公園内には、そのブランコに乗っている人しかいなかった。

大人になって一人でブランコに乗りたい感覚はわかる。子供の頃に遊んでいたことを、今も変わらずやっていたくなる。僕自身もそうだし、案外そんな人も多いと思う。でも、ブランコを勢いよく、となったら、日中はちょっと恥ずかしい。平日仕事をしていたら、休日の昼の公園は家族連れも多く、とてもじゃないけど大人が一人で思いっきり、というのはできない。それに仕事のストレス発散の意味もあるだろうから、そういった理由もあって、平日夜の目立たない小さな公園、というのが選ばれたんだろう。

東京の小さな公園で、大人が一人で夜に思いっきりブランコをこいでいる光景は、一見すると怖さもあるものの、俯瞰で見ると哀愁も漂っていた。